建物の修繕状況でマンションの売り時を考えてみる

マンションにとって建物の管理状況はリセール価格に影響を与える大切なことです。
修繕状況は建物寿命にも大きな影響を与えるので、この事に異論を唱える人はいないでしょう。では、丁寧にマンションを管理してれば必ず高い資産価値を維持し続けることができるのでしょうか?
今回は建物の修繕状況からマンションの売り時について考えていきたいと思います。


■購入者検討者はマンションの管理状況をチェックしている
マンションだけに限りませんが、中古不動産では建物の築年数が気になります。
木造よりも丈夫な鉄筋コンクリートであっても寿命があるので、「あと何年住むことができるのだろうか?」と、多くの購入検討者は気にしています。
この建物寿命を想定する上で欠かせないのが『建物管理』です。
 
「大規模修繕工事は行っているか?」
「耐震改修工事はしているか?」
「防水工事はしているか?」
「修繕積立金はいくら積み立てられているか?」   etc
他にも様々な項目がありますが、購入検討者は中古マンション購入時にこのような事を確認しています。
 
最近ではマンションの立替え事例が増えてきましたが、国内マンションの歴史はまだまだ浅くマンションの建物寿命については多くの意見が飛び交っています。
正確な数字で第3者に提示する資料はありませんが、同じ築年数であっても丁寧に建物修繕をしているマンションと建物修繕をしていないマンションを比較すれば前者の方が売買価格は高くる傾向にあり、購入検討者は「適切な建物修繕をしているマンションは建物寿命が長い」という判断をしていると考えて良いでしょう。
 
■マンションの必要経費修繕積立金 売却しても払い戻しはされない
修繕積立金についてまず確認して頂きたいのは、『支払った修繕積立金は戻ってこない』ということです。
修繕積立金は全額マンション管理組合に帰属することになり、修繕工事の実施・未実施にかかわらずマンション売却をしてもオーナーに全額払い戻しされることは無いので注意して下さい。
 
■良好な建物管理をするには十分な修繕積立金が必要
では具体的にどれほどの修繕積立金を負担しておけば適切な建物管理を行う事が出来るのでしょうか?
修繕積立金の金額はエリア、総戸数、総建築面積、共用部分有無、階数などの諸条件によって異なるため、本記事では具体的な金額明示はいたしません。
 
まず、確認するべきは『均等積立方式』か『段階増額積立方式』か、どちらの方式で建物管理を実施しているかです。
『均等積立方式』
将来に渡って建物修繕に必要になるであろう費用を、築年数にかかわらず均等に按分して費用を積み立てていく方式です。
毎月の負担額は大きくなりますが、所有期間内に積立金が値上げされるリスクが少なく、かつ建物を維持管理するに当たり十分な資金を確保することができます。
 
『段階積立方式』
築年数に応じて段階的に修繕積立金を値上げしていく方式です。
Ex)
新築時:7500円   築後5年:11250円(150%)    築後10年:15000円(200%)  築後15年:18750円(250%)
 
積立方式は築年数が浅い時期は金額を安く抑えることができる反面、大きなリスクを2つ抱えています。
「いつ、どのタイミングでいくら値上がる可能性があるのか」
「反対多数で値上げが出来ないかもしれない」
 
どちらのリスクもマンション売却に大きな影響を与えますが、特に気つけて頂きたいのが『積立金の値上げ』です。
積立金の値上げによって売却価格を低くしなければいけない可能性があるので、積立金の値上げとマンション売却のタイミングは紐づけて考えておいても良いかもしれません。
 
■積立金の値上げで売却価格が低くなる理由
では修繕積立金の値上げと売却価格の関係性を見ていきましょう。
勘の良い方はお気づきかもしれませんが、理由は単純で『月の支払い負担の増加』です。
頭では理解している方も多いかもしれませんが、具体的な金額で考えている人は少ないはずなのでまずは一例を確認して下さい。
 
Aマンション
購入価格(新築時):3980万円  管理費:月額12500円   修繕積立金:月額7500円 
(35年ローン / 頭金なし / ボーナスなし / 金利0.675%)
ローン支払い金額:106422円    月々の支払金額:126,422
 
Aマンション   築後15年経過
総会決議にて修繕積立金を1万円値上げることが決定
ローン支払い金額:106422円    月々の支払金額:136,422
 
単純に毎月々10000円の支払額増という状況になるのですが、これをローン金額に換算してみます。
『0.675%/35年ローン』の条件で、毎月10000円支払い金額になるローン金額は374万円、約400万円です。
これを前提に実際に売り出されている近隣マンションと比較します。

 
購入検討者目線で諸条件を確認する場合。
 
Aマンションの資金計算
購入希望価格:3080万円  管理費:月額12500円   修繕積立金:月額17500円
ローン支払い金額:82357円    月々の支払金額:112,357
 
Dマンションの資金計算
売出価格:3480万円  管理費:月額12500円   修繕積立金:月額9500円
ローン支払い金額:93052円    月々の支払金額:115,052
 
購入検討者がAマンションとDマンションを比較してみると、Dマンションの方に良い印象を持つ購入検討者が多くなることが予想されます。
Dマンションは400万円の差がついてはいるものの築後7年ということで室内付帯設備もクリーニングをすれば問題なく再利用可能、毎月の支払金額もAマンションとほぼ同じ。
 
対するAマンションですが、物件価格は確かに低いのです、が築後15年ということで水まわり設備(キッチン、お風呂場、お手洗い)の交換は何とか検討したいところ。
リフォームの事も考えると、Aマンションの希望売却価格では高い印象が拭えず、現在の金額では購入検討者から良い返事はもらえない可能性が高くなります。
 
ただ、決してAマンションの売却希望価格が高すぎるとはいうわけではありません。
新築時から約1000万円近く下げた金額ですから建物価格を考えれば許容範囲内の価格設定のはずです。
やはり、値上げされた1万円の修繕積立金(約400万円のローン金額)が毎月の支払金額を重たい印象にして、物件価格の割安感を打ち消してしまっている考えるのが妥当でしょう。
 
■積立金が上がる前に売却するのが得策
この事を考慮すると、マンションを売却するのであれば『修繕積立金が上がる前』に行う事が、不動産オーナーにとっては得策ということになります。
Aマンションの修繕積立金が値上がっていない場合毎月の支払金額は102,357円、Dマンションと比較しても値ごろ感を十分に感じてもらえるはずです。
 
修繕積立金の値上げは総会の決議を経る必要があるので、簡単には実施することはできません。
総会の議題に上がってからスムーズに行っても1年はかかるはずなので、値上げの検討が始まってからでもマンション売却を行う時間は十分あります。
売却活動中、購入検討者に対して「積立金額の値上げを検討中」ということをしっかりと伝えておけばトラブルになることもありませんので、金銭面を最優先に考えるのであればこのタイミングで売り逃げするのが得策と言えるでしょう。
 
 
捉え方によっては『積立金を値上げしない方が良い』とも読めますが、建物修繕は重要なことですから値上げは必要不可欠です。
区分所有者の管理意識が高まり築浅マンションでも積立金の値上げは実施しているので、積立金の値上げを売却のタイミング推し量る判断材料の一つにしても良いのかもしれません。

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