電卓一つで建物の減価償却費を計算する 取得費の計算は簡単にできる

前回、マンションの建物価格を算出したので今回は減価償却費の計算をしていきます。
確定申告書を完成させるためには『取得費』の計算をしなければいけないのですが、取得費を求めるためには建物の減価償却費を計算しなければいけません。
『マンションの建物価格と土地価格の按分方法』と合わせて確認して下さい。

■マンション売却で減価償却費を計算する理由
確定申告はその年の所得を確定させる作業なので、マンション売却で生じた『利益もしくは損失を確定』させなければいけません。
 
不動産売却の所得、損失は、買購入金額から売却金額を差引く簡単な計算式でこの段階での計算は難しくないのですが、問題なのは建物の減価償却費です。
 
『取得費』とは読んで字のごとくマンションを取得するために要した費用の事を指しているのですが、売買契約金額(購入時)をそのまま転記すれば良いというわけではありません。 
不動産は土地と建物に分けることができ、ご存知のように建物は減価償却資産です。
土地価格は地価の変動によって上下するもので、将来に渡って地価が変動しないのであれば5年後も10年後も金額は同一です。
このことから、土地は減価償却資産に該当せず、物件種別(マンション・一戸建など)にかかわらず土地の減価償却費用を計算する必要はありません。
それに対して建物は利用状況や経過年数などに応じて必ず価値が減少していきます。
なので、建物の取得費は建物の購入代金などの合計額から減価償却費用を絶対に差し引かなければいけません。
 
減価償却費の計算方法は居住用と事業用で異なり、今回は『居住用』に限定して確認をしていきます。
計算にあたっては書類の取得などの必要はありませんので、建物価格の計算が終わっていれば電卓だけ準備してもらえれば問題ありません。
 
■建物減価償却費用の計算方法
減価償却費の計算方法は居住用と事業用で異なり、今回は『居住用』に限定して確認をしていきます。
また、定額法、定率法と2つの計算方法が設けられていますが、今回は定額法で減価償却費を計算しています。2016年4月1日以降に取得したマンション・一戸建てについては定額法のみの適用となっているので、この点については掘り下げて確認していく必要はないはずです。
 
《公式》
減価償却費 =建物購入価額 × 0.9 ×償却率 × 経過年数

          ①           ②      ③      
 
国税庁のHPなどを確認すると複雑なことが書かれていますが、マイホームの売却ではこの公式だけ覚えておいて下さい。
この公式に各数字を当てはめれば減価償却費の計算は完了なので手元に電卓だけ準備しておきましょう。
 
公式を見ていると聞きなれない単語などが出てきているので、次は①~③の単語を確認していきます。
①建物購入価額
これは建物金額のことです。
『価額』と書いてありますが、前回計算した建物金額を当てはめて下さい。
 
②償却率
税法では建物構造に応じて耐用年数が定められており、それぞれで償却率が異なります。
以下表が各建物構造の諸却率です。

建物の構造に合わせて赤枠内の償却率を確認して下さい。
(%ではありません)

③経過年数
経過年数の単位は『年』です。
年未満の○ヶ月の部分は切り捨てとなります。
マンションを取得してから10年5カ月が経過している場合は10年、取得後15年10カ月が経過している時は15年です。
※中古マンションの経過年数は次の項目で確認します。
 
これで減価償却費の算出に必要な数字は全て揃ったので、あとは数字を当てはめて電卓で計算するだけです。
 
■マイホーム売却では中古も新築も関係ない
減価償却の話をしていると耐用年数や築年数などを含めて複雑に考えてしまう方がいますが、単純に『何年マンションを所有していたか』だけ確認すれば良いです。
 
仮に築20年の中古マンションを購入して、8年6カ月後に当該マンションを売却したとします。
この場合の所有期間は8年6ヶ月となり、公式に当てはめる経過年数は8年となります。
 マイホームの売却では築年数や耐用年数を考慮する必要はありませんので難しく考える必要はありません。
 
■実際の建物価格を当てはめて減価償却費を計算してみる
では実際に建物価格を算出して計算をしてみましょう。


①持分割合に応じた土地の評価額を求める
151042404(土地評価額) ×6 = 906254424円
906254424 ×(6130/319685)=17377542円
 
②土地・建物 評価額の合計額を計算する
17377542(持分割合に応じた土地評価額) + 7408918(建物評価額) = 24786460円
 
③建物評価額が占める割合を計算する
約29.89%
 
④建物評価額の割合を契約金額に当てはめる
46800000 × 29.89%= 1398万円
 
個人間売買で4680万円の中古マンションを購入した場合
建物価格:1398万円
土地価格:3282万円
 
⑤減価償却費の公式に当てはめる
《公式》
減価償却費 = 建物購入価額 × 0.9 ×償却率 × 経過年数
 

13,980,000 × 0.9 ×0.015% × 9 = 1,698,570円
建物減価償却費 =1,698,570円
 
⑥取得費
購入金額 – 減価償却費 = 45,101,430円となります。
 
これで取得費に関する計算は完了で、確定申告書の取得費の欄には445,101,430円と記入して下さい。
 
国税庁のHP等を見ていると減価償却の計算が難しそうに解説されていますが、必要な項目だけをピックアップすればこれだけ単純計算となります。
電卓さえあれば誰でも直ぐに計算できるので取得費を計算してみて下さい。

↓↓各エリアの相場情報はこちらから↓↓エリア別中古マンション価格情報

マンション売却の課題は【売出価格をいくらにするか?】です。
多くの不動産オーナーの方は『売り出し価格を低く設定してしまった』と後悔しているので査定価格の比較は必須です。
査定価格の比較は大手・中小の不動産仲介会社を網羅するイエイにお任せ下さい。

不動産査定